在日韓国人の親族が亡くなり、相続の手続きをしなければいけなくなったときに、韓国領事館で亡くなった被相続人の戸籍(除籍謄本)や家族関係証明書を取ってきて、相続人が誰であるかを調べてみたら、思いもよらなかった人が相続人の一人になっていたということがあります。
私がお任せいただいた中では、このような案件がありました。
ご依頼主のお父様は既に10年ほど前に亡くなっていましたが、土地と家屋がずっとお父様の名義のままになっているので、登記をご子息のうちのお一人であるご依頼者の名義に変更したいという内容でした。
韓国領事館で、被相続人であるお父様の戸籍謄本(除籍謄本)を取って来て相続人が誰であるのかを確認してみますと、ご依頼主のご兄弟だけでなく、それ以外の相続人がいることがわかりました。
ご依頼主のお父様は、戦後まもなく韓国から日本に渡って来られたのですが、韓国にいるときにご依頼主のお母さまとは別の方と結婚していたのです。そして、その前妻との間に子供さんが2人いたのですが、2人とも既に亡くなっていました。ところが、その2人の子どもさんは、それぞれ結婚しており、一人は子供さんがいて、もう一人は、養子を取っていました。よって、その子供さんと養子の方(亡くなったお父様から見れば孫)も相続人となります。
しかし、日本に生まれた時からずっと住んでいるご依頼者は、お父様が韓国にいたときの前妻のことは全く知りませんし、その前妻との間に子供がいることはもとより、その子供が結婚して子供がいたり養子を取ったりしていることも思ってもいなかったことでした。韓国に住んでいると思われるその人たちとの間に交流もなく、住所も連絡先も全くわかりません。
けれども、その人たちが相続人となっていることは事実です。相続人を確定してお父様の名義となっている不動産をご依頼者の単独名義にするためには、遺産分割協議書を作成してそれに相続人全員の署名、押印が必要となりますが、韓国にいる相続人は行方不明であるので署名、押印をもらうことができません。
では、どうすればよいのでしょうか?
日本にいる日本人の場合は、戸籍の附票を取れば住所が書いてある可能性が高いので、それにより連絡先を知ることができます。
しかし、韓国では、そのような制度がありません。個人情報保護が徹底されており、刑事事件に関連する場合でない限り、役所等では住所を教えてくれません。
それか、韓国内で弁護士に依頼して遺産分割の裁判を起こせば、それに伴って相続人の住所を知ることができます。しかし、それも日本に住んでいる在日韓国人からすれば労力の面からも費用の面からも大きな負担となります。
そこで、考えられる手段として、日本の家庭裁判所に「不在者財産管理人」選任の申立をして、行方不明の相続人の代わりとなる財産管理人を付けてもらい遺産分割協議書に代わって署名、押印してもらうという解決方法があります。
この不在者財産管理人には、弁護士がなるのが通常です。
この案件もこの方法により無事に解決し終わらせることができました。
同じような問題でお悩みの方も、当事務所までお気軽にご相談ください。
連携している弁護士と連携して、解決させていただきます。費用面のご負担も軽くなるようにさせていただいております。