2021年4月1日から、大阪の韓国総領事館で兄弟の家族関係登録事項別証明書を取ることが極めて難しくなりました。
兄弟の家族関係登録証明書(基本証明書、家族関係証明書、婚姻関係証明書、入養関係証明書、親養子入養関係証明書の5種類の証明書)の取得が特に問題となるのは、被相続人の兄弟が既に亡くなっていたり、または、兄弟が被相続人となり財産の相続手続きが必要となった場合に相続人が誰であるのかを確定するときです。その亡くなった兄弟に婚姻歴が無く、配偶者も子もいないという場合に問題となります。(配偶者や子がいれば、その人が請求できますし、委任状をもらうこともできます。)
もともと、2016年6月30日に韓国憲法裁判所の違憲決定により、家族関係登録事項別証明書の請求権者として「兄弟」が外されることになり、兄弟は発行請求ができなくなっていました。理由は、個人情報の保護です。もちろん、兄弟や兄弟の配偶者、直系の親族(子など)から委任状をもらったら取ることができます。しかし、そのように委任状をもらっていない場合は、兄弟が他の兄弟の家族関係登録証明書を取ることができないということです。例えば、長男が次男の家族関係登録証明書を委任状なしに取ることができないということです。
韓国では、この憲法裁判所の違憲決定の趣旨を厳格に貫いていました。
ただし、日本では在日韓国人の相続における必要性を考慮して、領事が特別の配慮をして例外的に兄弟の家族関係登録証明書の請求を認めていました。具体的には、兄弟の一人が亡くなったけれども、婚姻歴が無く、配偶者も子もいない場合には、韓国に死亡申告を出した後に、相続手続きに必要なことを疎明することにより例外的に兄弟が家族関係登録証明書の発行請求を認めてもらえるという運用になっていました。
ところが2021年4月1日からこのような例外的な運用が認められなくなり、兄弟の家族関係登録証明書の発行請求が認められないという原則を厳格に適用されることになりました。大阪だけではなく、東京、福岡の各韓国大使館、領事館でも同じことになっているようです。
総領事館の窓口では、兄弟の家族関係登録証明書が必要な場合は、日本の家庭裁判所で、その兄弟の相続財産管理人の選任をしてもらってから、その相続財産管理人によって取得してくださいという案内がされています。
しかし、このような手段は相続の当事者にとって、かなりの負担になることが予想されます。
大阪の家庭裁判所では、申立人が自分で相続財産管理人の候補を選ぶことはできず。裁判所が弁護士の中から指定するようです。費用も最低でも20万円はかかるようです。証明書を取るだけのために、このような迂遠な方法をとることは費用や時間がかかりすぎます。
もし、できるのであれば、韓国の家族関係登録証明書を取るために、専門家以外の任意の者を相続財産管理人に指定できるようにして費用を安くするという運用を家庭裁判所に行ってもらうのが望ましいと思います。
また、法務局での相続登記手続きや銀行等の金融機関における相続手続きにおいても、特別な配慮を行うことが必要となってくると思われます。